「国際物理オリンピックに参加して 谷崎 佑弥」リレー・エッセイ 2-②

「国際物理オリンピックに参加して」 谷崎 佑弥

2006年シンガポール大会代表
谷崎 佑弥

私は小さい頃から理数系の科目が好きな子供でしたが、物理学を研究しようとまでに熱中するとは高校に進学したときには夢にも思っていませんでした。そんな私が大学で物理を専攻してもう10年ほど経ってしまいました。振り返ってみれば、そのきっかけは高校生の時に物理チャレンジや国際物理オリンピックに参加したことだったのは間違いありません。

物理オリンピックでは、一週間以上にわたり同じ宿舎に世界中から集まった物理好きの学生が集まってきます。途中で難しい試験を解かなくてはならないのは大変ですが、その他の時間は第一線で活躍されている研究者の話を聞いたり、研究所を見学したりします。当時高校生だった私は、それまで研究者とは何をしている人々なのかも知りませんでしたから、とても刺激を受けたことを覚えています。話の内容の多くは残念ながら忘れてしまったのですが、物理チャレンジで外村彰さんがアハラノフ=ボーム効果を実証した実験を説明してくださりました。もちろんその時は何も理解できませんでしたが、量子の世界は日常生活で体験する世界とはとても違って見えることへの素直な驚きが伝わってきたのだけは鮮明に覚えています。

物理チャレンジや物理オリンピックに参加してなにより私にとって印象深かったのは、これだけ多くの学生が物理を好きだと言う事実でした。普通に高校に通っていてもそういう生徒は多くて数人でしょうから、このことは良い意味でショックでした。多くの人が全く違う文化で育ちながら、自分と同じく物理というものに興味を持つのが嬉しかったのかもしれません。

物理学というのは、自然がどのように動いているのかを知りたい、というのが基本的な思想です。教科書には過去の偉人たちの成果がとても要領よくまとめられていて、それだけ学んでいるとあたかもすでにあらゆる事がわかっている、という印象を持たれるかもしれません。でも、研究をしてみて感じることは、なにか一つのこと理解しようとすると何倍もの新しい疑問が生まれてくるということです。そして新しいことを理解するには、自分で計算することと同じかそれ以上に全く違う背景をもった人々と議論していくことが大事になります。高校生の時に物理オリンピックに参加し、このことを擬似的に体験できたことは私にとって大変幸運なことでした。

参加した生徒たちが物理学者の道に進むかどうかによらず、これらの体験は彼ら・彼女らにとって貴重なものになると思います。IPhO2022の成功を願っています。

【略歴】

出身地 福岡県春日市
出身高校 西南学院高校 2007年卒業
大学院 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程 2016年終了
職歴 理研BNL研究センター、ポスドク、
現職 ノースカロライナ州立大学 ポスドク 日本学術振興会特別研究員(PD)

 


シンガポール大会に参加した仲間

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