「物理コンテストに参加して 髙倉 理」リレー・エッセイ2-⑫

「物理コンテストに参加して」

2007年イラン大会
髙倉 理

髙倉 理名前が「理」であることからもわかるように、私は完全に理系の両親に育てられた。小学生の頃から頻繁に大阪市立科学館に通い、青少年のための科学の祭典などのイベントに参加したり、原子力発電所の見学会に参加したりしていた。特に、おもちゃのような簡単な実験装置の工作が面白かった。また、一般的な家庭用ゲーム機は買ってもらえず、代わりにパソコンで物理演算シミュレーションを利用したパズルゲームを遊んでいた。その時点で、それらを楽しめるくらいには物理への興味を植え付けられていた。

しかし、人間同じことを体験していると飽きてくるというものである。中学生の頃は物理研究部もあったが、あえて担任の物理の先生が顧問をやっているバドミントン部を選んだ。そのままだと人並みに学校で勉強するだけだったと思う。

そのような物理から距離をおいた青春を送っていた私にとって、2005年の第1回物理チャレンジは衝撃的だった。たまたま父に教えてもらい申し込んだが、応募問題ですら今まで見たことがないくらい難しく、参考書の「楽しめる物理問題200選」に至っては物理の問題集であることが信じられないくらい手も足も出なかった。それでも明確な目標を持つ意味は大きく、授業の範囲を超えて自分で物理を勉強するきっかけになった。

そして、物理の面白さを教えてくれたのが物理チャレンジの実験問題である。装置の組み立てが難しかったり、直線上にくるはずの測定点がバラバラになってしまったり、答え(理論)が分かっていてもその通りにならないことがある。それでも実験は物理法則にしたがっているはずで、問題点を考える手がかりになるのも、また理論である。逆に、理論がわからなくても、実験から法則性を見つけ出すこともできる。理論と実験が互いに検証しあうことで、自然現象を解明する学問として自己完結している。それこそが物理の素晴らしさだと思う。

私は、物理チャレンジ、オリンピックに参加し、そのような貴重な体験をさせてもらった感謝として、物理学者として物理の発展に貢献することを志した。とはいえ、それらは、あくまで与えられた答えのある問題を解くコンテストである。最先端の研究では、まだ誰もやったことがない、答えがあるかどうかもわからない問題に取り組まなければならない。そのためには、問題を解く能力だけでなく、新しい問題を発見する好奇心や、アイデアを生み出す発想力が重要だと感じる。学会などで高校生による研究発表の場もあるので、意欲があれば挑戦してみてほしい。

もちろん、物理チャレンジ、オリンピックを通した人との出会いにも感謝している。私は現在、南米チリにある望遠鏡を用いて宇宙マイクロ波背景放射の精密観測をする国際共同実験に参加しているが、それも物理チャレンジで知り合った先輩に誘われたのが理由の一つである。

2006年の物理チャレンジで実験問題に取り組む様子

POLARBEAR望遠鏡と作業中の私

 

【略歴】

出身地 大阪府東大阪市
出身高校 私立灘高校
大学 大阪大学理学部物理学科(中退)
大学院 大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻(博士号取得)・高エネルギー加速器研究機構
現職 日本学術振興会特別研究員PD
(東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構)

 

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